学園日誌

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10代のメンタルヘルス【3】

今号から、10代のメンタルヘルス【3】

うつ病?どうやって見わけて、だれに助けてもらうのか?(大月書店)を紹介をします。



今や、子どものうつ病や強い抑うつ気分は、メンタルヘルスの大きな問題となっています。

そこで、うつ病とはどんな病気なのか、その見分け方、治療の方法とうつ病の人を助ける方法について、3回にわたって、詳しく紹介をしていきます。


うつ病は、気分障害です。

気分障害は、気分や気持ちに影響する病気です。うつ病の人は、どうしようもないほど大きな悲しみを感じます。「むなしい、どうすることもできない、孤独だ」という気持ちになります。なぜそんなに悲しいのか、本人でさえわからないのです。うつ病は、憂うつな気分より深刻なものです。誰でも時には落ち込んだり、がっかりしたりするでしょう。病気になったり、学校で嫌なことがあれば、ふさぎこんだりもします。思うようにいかなかったときには、気がめいるでしょう。でも、そんな憂うつな気分は、何日かするとなくなります。憂うつな気分より深刻な状態を、うつ病と呼びます。



うつ病は、何日も続くのもので、専門家の治療が必要です。
うつ病は、考え方や行動に影響を及ぼします。うつ病の人は、自分に自信が持てないので、「自分には何の価値もない」と思ったりします。現実の問題や、想像で作り上げた問題について、長い時間悩み続けます。うつ病の人は、元気がなく、楽しいことがあっても、「うれしい!」と喜べなくなっています。
うつ病によく見られるのは、睡眠障害です。なかなか眠れない人や、眠っても朝早く目が覚めてしまったりします。一度起きると、寝直すことができません。逆に寝過ぎる人もいます。食欲がなくなることもあります。

反対に、気分を良くするために、食べ続ける場合もあります。
うつ病になると、日常生活がうまく送れなくなることがあります。学校や仕事に集中できなくなり、ひどい場合にはベッドから起きあがれなくなります。着替えをすることすらできない場合もあります。
ずっと絶望感にひたっていて、それが死へとつながることもあります。自分のつらい気持ちを消し去るには、自殺しかないと思いこんでしまうのです。うつ病の治療をしないでいることが、自殺の最も大きな原因になってます。



うつ病がどんな原因で引き起こされているのか、確かなことはわかりません。いくつかの原因が重なって引き起こされる場合もあります。ひとつの大きな原因で起きることもあるでしょう。また、特に原因が見あたらないのに、うつ病になる人もいます。脳の化学物質に変化が起きて、うつ病の原因になったり、うつ病を引き起こしたりすることもあります。

うつ病にかかりやすい傾向は、遺伝することもあります。大きなショックやストレス、他の身体の病気や薬物依存なども、原因になることがあります。



うつ病は誰でもかかる病気です。男性でも女性でもうつ病になります。人種にも関係ありません。子どもや10代の若者も、うつ病にかかることがあります。

33人に1人の子どもがうつ病だという調査があります。10代では8人に1人とさえ言われています。1980年代後半になるまで、医師達でさえ、うつ病は子どもや若者がかかる病はではないと思っていました。子どもや若者は、感情が十分に発達していないのでうつ病にかからないと思われていたのです。けれど現代では、この考え方は変わりました。子どもや10代の若者が、大人のように複雑な感情を持っていることがわかったからです。

しかし現代でも、このことを理解できない親や大人がたくさんいます。「いったい10代でどんな心配事があるんだ?」と思っているのです。でも現実には、10代はとても難しい時期です。ごく普通に成長するだけでも、たくさんのストレスをかかえます。体の変化はもちろん、責任や義務を負うこと、恋愛などを含む新たな人間関係にも慣れていかなくてはなりません。



家族からも精神的に独立し始め、自分自身でいろいろなことを決めていきます。どれも大変なことです。更に現代では、昔と違うストレスがあります。現代における圧迫感とストレスが10代をうつ病に追い込むことがあります。

気分障害を大きく分けると、重いうつ病と双極性のうつ病の2つになります。重いうつ病の人は、すぐに治療を受けなくてはなりません。重いうつ病は、症状が出たり引っ込んだりする病気です。重いうつ病の症状が現れると、2週間から1年も続くことがあります。強いストレスが、重いうつ病の症状を引き起こすことが良くあります。周期や症状の程度は様々です。強いうつ状態の人では、幻覚症状を起こすこともあります。



双極性うつ病は、気分が激しく変化します。とても気分が高揚する「躁」の時と、ひどく気分が落ち込む「うつ」のときが交互に訪れます。

双極性うつ病は、以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。双極性うつ病は、よく混乱を引き起こします。
また、軽傷のうつ障害は、気分変調症(ディスサイミア)とも呼ばれますが、見逃されがちです。症状は軽いのですが、長く続きます。何年も続く場合賀もあります。そのため、その人の性格の一部のように見えることがあるからです。気分変調症は、日常生活を送ることはできますが、生活を楽しんでいるようには見えません。気分変調症は、思春期や青年期に始まり、治療を受けないでいると、重いうつ病になることも多いのです。




そして、うつ病を誤解している人はたくさんいます。うつ病を、ガンや心臓病のように誰でもかかる病気だとは思っていません。うつ病から、簡単に抜け出せると思っているかもしれません。しかし、うつ病は他の病気と同じように、ちゃんと治療しなくては治らないのです。うつ病の人は、心の痛みに向き合わなくてはなりません。精神病にかかっているという、恥ずかしさも乗り越えなくてはなりません。「うつ病にかかることは恥だ」と思っている人もいます。これは古い考え方で、間違っています。

うつ病の人は、悪い人でもおかしな人でも弱い人でもありません。うつ病の人に必要なことは、思いやりをもって接して、理解し、受け入れてあげることなのです。




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