今号から、10代のメンタルヘルス(5)怒りのコントロール (大月書店)を紹介をします。
怒りの感情は、よいとか悪いとかいうものではなく、人間の自然な感情のひとつです。どうコントロールするかで、役に立つこともあれば、役に立たないこともあります。10代の子ども達にとって、怒りとどう付き合うかは、大切で、時には切実な課題となります。
怒りには、大きく分けて3つのタイプがあります。押さえ込んだ怒り、攻撃的な怒り、建設的な怒りです。3つを組み合わせたタイプの人もいます。
(1)押さえ込んだ怒り
このタイプの人は感情を内側に閉じ込めて、怒りを人に見せないようにします。怒りを外側に向けて発散することはありません。自分のせいでなくても、自分のせいにしたり、本当は自分がどれほど怒っているのか、気がついていないこともあります。このタイプの人は、怒るのは弱い人間で、礼儀正しくて分別のある人間は怒らないものだと思っていたりします。
また、自分の怒りを表現すると、周囲の人に拒否されるとも思うのです。このタイプの人は、争いや揉め事を避けようとすることが多く、周囲と仲良くしていくためには、決して怒りを見せてはならないと思い込んでいます。怒りを押さえ込むと、その場の平和は保てるかもしれませんが、その人自身は大きな犠牲を払っているのです。このタイプの人は、たいてい人に従ってばかりいますから、自分の要求を通すことができません。怒りを長く溜め込んでいるうちに、暴力となって爆発することがあります。
また、時間が経つにつれて、うつ病や胃腸病や慢性の痛みなど、他の問題を起こすこともあります。また、押さえ込んだ怒りのタイプは、卑怯な方法で人を攻撃することがあります。例えばしかめっつらをしてみせたり、批判したり、皮肉を言ったりします。コンサートや約束にわざと遅れたりすることもあります。親に対して怒っている場合は、電話やメールのメッセージを消してしまって、親を困らせたりします。このような間接的なやり方は、押さえ込んだ怒りが攻撃的に変わったときの特徴です。
(2)攻撃的な怒り
このタイプは、怒りを爆発させます。叫んだり、ドアをたたいたり、物を壊したり、ののしったりします。人を押したり、つねったり、かんだり、殴ったりすることもあります。攻撃的なタイプの人は、復讐心に燃えます。自分をひどい目に合わせた人に、仕返しをしようとするのです。攻撃タイプの人は、かっとなりやすく、人の批判にとても敏感です。せっかちなので、交通渋滞のようなのろのろした日常の出来事にうまく対応できません。自分のしたいことを邪魔されるといきなりキレることもあります。
攻撃的な怒りは、すぐ火がつきますが、すぐに消えます。このタイプはいったん爆発すると気が晴れるのです。攻撃的な怒りは、問題の解決にはなりません。人間関係を傷つけることもあります。爆発したり、キレた後、本人は気が晴れるかもしれませんが、周囲の人は傷つきます。怖がられるようになることもあります。爆発したり、キレたりするのは、怒りをコントロールできないからです。そのことが、心臓病や脳卒中などの大きな危険要素となることも明らかにされています。
攻撃的な怒りには、幾つか種類があります。ひとつは、計画的な怒りです。例えば自分のほしい物を手に入れるために怒ってみせたりします。暴力団が人を怖がらせたり、力をふるうために怒って見せるのと同じです。怒りで、相手をコントロールしようとするのです。子どもや若者も、怒りを爆発させたりかんしゃくをおこしたりすることがあります。それは、自分の要求を通そうとするためです。もうひとつの攻撃的な怒りは、習慣性の怒りです。怒るのを楽しみ、怒る感覚が好きな人もいます。
(3)建設的な怒り
このタイプは、怒りが爆発しないように努力します。相手を攻撃せずに、自分の気持ちを肯定し、自分を信じます。そして、なぜ自分が怒っているのかを説明し、人の考えも理解しようとつとめます。
建設的なタイプは、どうしたら自分の感情をうまくコントロールできるかを考えています。押さえ込むタイプや攻撃的なタイプに比べて、建設的なタイプには幾つかの良い点があります。このタイプは、問題を解決しようとします。その結果、自分の求めていたものを得ることも多いのです。自分自身や周囲を傷つけることなく、怒りの気持ちを表せるので、人間関係もうまくいきます。
「怒りのきっかけ」というのは、怒りを引き起こす出来事や状況のことです。人によって様々なことが怒りのきっかけになります。怒りのきっかけには
■身体や気持ちを傷つけられたこと
■挫折感
■不公平感
■イライラ感
などがあります。怒りのきっかけは、無力感や恐怖感のようなよくない気分をもたらします。
怒りのきっかけが爆破につながらないように、努力することができます。
(1)きっかけをさける
(2)考え方を変えよう・・・自分の考え方、自分自身に対しても考え方を変えてみましょう。自分を認め、自分に対する前向きなコメントをするのです。
(3)前もって計画する
(4)他の方法をみつけよう
(5)時間を変える
(6)怒りのきっかけを無視する
次回は、怒りの感情をコントロールする方法について、より詳しく紹介します。