学園日誌

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10代のメンタルヘルス【4】-3

今月も引き続き、10代のメンタルヘルス(4) パニック障害 (大月書店)を紹介をします。



はじめてパニック発作が起きると、10代の若者は大人と違った反応をします。10代の場合、まず、救急病院に駆け込むことが多いのです。まるで人生が終わってしまったかのように思い、自分がおかしくなってしまったのではないかとショックを受けます。命に別状がないと分かると、今度は途方にくれたり心配します。



初めてのパニック発作で恐怖感を持つこともあります。逆に「発作は一度きりで、もう起きるはずはない」と思い込むこともあります。パニック発作が起きると、どうして良いかわからなくなって混乱しますが、何度か発作を起こすうちに危険がないということが分かってきます。それでもひどい恐怖感はよくなりません。なぜそんなに強い恐怖感が襲ってくるのか、自分でも分からないのです。発作をとても恥ずかしいと思ってしまうこともあります。気持ちが混乱するので、自分の発作や症状を隠そうとします。家族や親友にすら知られたくないと思います。



パニック障害は、生活をいろいろな面で変えてしまいます。友達関係、学校での活動や成績、自尊感情といった内面にも大きな影響が出てきます。



パニック発作のことを秘密にしていると、自分の考えや気持ちを閉じ込めるようになり、周囲と距離感ができてしまいます。人間関係がうまくいかなくなり、周囲から孤立していると思うようになります。パニック障害が、回避行動を伴うようになると、発作を起こすような原因や状況を避けるようになります。そのために、友達に嘘を言ったり、口実を作ったりしますが、相手は納得できません。傷ついたり、腹を立てて、言い争いになり、友情が壊れることもあります。



パニック障害になった10代は、行く場所や活動を制限し始めます。日常生活が変わったり、今までやっていた活動を全く止めたりすることがあります。例えば、友達と映画に行ったり、ショッピングやスポーツにも出かけなくなります。発作への不安で、集中力がなくなり、成績が落ちることもあります。ピアノを弾いたり、パズルを解いたり、テストを受けたり、用事を覚えることが困難になる場合もあります。スポーツや職場での成績が悪くなることもあります。



パニック障害になると、自分についての考え方が変わります。発作を止めることができないと、自信や自尊感情が失われていきます。自分を意気地なしだと思ったり、意志の力や決断力が弱いと思い込んでしまうのです。病気の原因が思い当たらないので、発作を自分のせいだと思うこともあります。自分は、悪い人間だと、決めつけてしまいます。けれど、それは間違いです。パニック障害は、たんに一つの病気なのです。治療を受けて、治る病気なのです。



周囲の人に発作のことをどう思われるか、10代にとってはとても心配なものです。どうかしてしまったんじゃないか、などと誤解されると思い込みがちです。確かにそう思う人もいるかもしれませんが、大半の人は、どうしてよいか分からないという戸惑いを感じます。他にもいろいろな反応があります。パニック障害についてどれくらい知っているかで、反応も違ってきます。パニック障害の人は、周囲の反応に対して、心の準備をしておくとよいでしょう。パニック障害について知らない人は、発作をおかしなものだと思うかもしれません。危険でもないのに、どうしてそんなに怖がるのだろうと、不思議に思う人もいるでしょう。パニック障害について知っている人は、パニック障害の人の気持ちを分かり、力になろうとしてくれるでしょう。



パニック障害は深刻な病気です。人生をめちゃくちゃにする可能性もあります。けれど、幸いなことにパニック障害の治療の成功率は高いのです。適切な治療を受ければ、75?90%の人が回復し、元の生活に戻ることができます。



治療を始めたら、回復のために周囲のサポートが必要です。回復してくると、「パニック発作はもう起きないんだ」という気持ちになります。さらに、「パニックしても大丈夫」と思えるようになれば、発作は少しずつなくなっていきます。パニック障害の治療では、主に二つの療法に効果があることが分かっています。認知行動療法と、薬物療法です。この二つを組み合わせる方法がよく取られています。



認知行動療法はCBTと呼ばれ、認知療法と行動療法という、二つの療法を組み合わせたものです。認知は、「知って、認める」という意味です。CBTの認知療法では、まず



■自分自身をどう思っているか



■世界をどう捉えているか



■将来についてどう考えているか



■自分が信じていること



などを認知します。この段階で、不安感を起こす原因となる誤った考え方を発見し、それを訂正していきます。認知の目的は、考え方を変えて、気持ちを落ち着かせることです。CBTの行動療法は、不安感を減らすために緊張をほぐす行動を学びます。深呼吸や体操などのプログラムを毎日続けます。行動を変化させることで、体をリラックスさせ。精神を冷静にします。CBTは、通常6週間以内で効果が出始め、だいたい12週間続けます。CBTのおもな5つの要素は、「学ぶこと」「観察すること」「リラックスすること」「考え直すこと」、そして「気持ちを吐き出すこと」です。



パニック障害の効果的な予防方法として、生活スタイルを変えることも大事です。定期的な運動、タバコを吸わないこと、刺激物を避けること、体によい食べ物を食べること、たっぷりとした睡眠、酒類や薬物をひかえることが大切です。そして、自分のためだけの時間を作りましょう。



パニックを避けるためのアイデアとして、発作の前に起きる初期症状について知り、初期症状が起きたらどうしたらよいか準備をしておきましょう。初期症状が一つでも始まったら、すぐに



「あ」・・・あわてないで受け入れる



「い」・・・息を整え深呼吸



「う」・・・うろたえないで対応する



のステップで対応しましょう。初期症状を抑えても、パニック発作が起きてしまうこともあります。そんなときは、できればその状況から抜け出ることです。そして「あ・い・う」のステップを繰り返しましょう。



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