今号から、10代のメンタルヘルス?G ストレスのコントロール (大月書店) を紹介します。
ストレスという言葉はよく使われますが、あまり厳密に定義されていないようです。
関連する本を読んでみても、人によって定義にある程度幅があります。
この本では、「変化に対する心と身体の反応」と大きく定義し、その後、より細かに説明しています。
・よいストレス
よいストレスは、人をどきどきさせると同時に、ワクワクさせます。例えば、転校をするとしたら、
新しい友達ができるだろうと楽しみに思うと同時に、仲間に入れてもらえるかな、友達ができるかなと心配になるでしょう。
よいストレスも、人を怖がらせたりどきどきさせますが、チャレンジをしてみよう、という気持ちにもさせてくれます。
・悪いストレス
悪いストレスは、人を怒らせたり、怖がらせたり、悲しませたりします。
悪いストレスは、不健康です。
不健康なストレスは、人をイライラさせたり、ビクビクさせたりします。
お腹が痛くなったり、頭痛がすることもあります。その中でも、注意しなければならないストレスとして、
「慢性的なストレス」があります。慢性的なストレスを抱える人は、ストレス・ホルモンが身体の中で残業しているようなものです。だんだん身体が弱って疲れてきます。腹痛や頭痛が起きたり、身体が痛くなったりすることがあります。いつも気持ちが沈み、心配で、疲れている上体が続きます。食事もいい加減になり、日常生活がおろそかになるため、血圧が上がったり、心臓病になったり、脳卒中を起こしたりすることさえあるのです。
このように、ストレスに、「よいストレス」と「悪いストレス」があるとしていることは、興味深いことではないでしょうか。
実は、ストレスは、全て心身にとってよくないものというわけでもないのです。
ストレス状態が生じると、人間の心身は、その人を守るために何らかの生体反応を起こして、新たな事態に対応できるように自動的にするのです。
自動的にできない場合でも、自分でそういう気になって上手にそれを乗り越えると、それがかえって自信になったりします。
明日、学校で大事な試験があるとしましょう。
失敗すると取り返しがつかない試験であれば、事態は重大です。
つまり試験は、その人の外側で大きな変化が起こっていることを表します。
でもそういう時は、通常、心身が試験の準備をしなければならないというモードになって、普段より集中力が発揮できたり、自分でその気になって、普段より大きな力を出したりするものです。
ストレスが集中モードを作っているのです。これは、ストレスがあるために、普段より課題状況をうまく乗り越えられることがあるということを表しています。
ストレスは、ある範囲内であれば、人間の意欲を高めたり、集中力を高揚させて、それを乗り越えさせることがあるわけです。ある程度のストレスは、人間を意欲的・能動的にさせるわけで、一定のストレスは人間には必要だということになりますし、それを乗り越える訓練も必要ということになります。
ストレスは、誰の生活にもあります。大切なのは、ストレスの症状について知り、ストレスをコントロールし、減らしていく方法を学ぶことです。生活から全くストレスをなくすことはできませんが、ストレスにコントロールされるのではなく、あなたがストレスをコントロールするのです。
ストレスの原因はたくさんあります。
10代にとって多いのは、学校、仕事(アルバイト)、家族、仲間などです。
性の悩み、社会、自分の将来への不安などがストレスを起こすこともあります。
ストレスにそのつど対処して、こなしていける人がいます。こういう人はストレス耐性が高い、
つまりストレスに強いといえます。自然にストレスに対処する方法が身についていて、たくさんのストレッサー(ストレスの原因になるもの)を病気にならずに対処できます。
ストレスに強い人の特徴は、自尊感情が高いことです。
自尊感情が高いと、自分を肯定的にとらえ、自分の気持ちや考えを大事にしていくことができます。
問題が起きても話し合い、解決したり、自信を持って決断をすることができます。
一方、ストレスを感じるとあきらめてしまう、ストレス耐性の低い人、つまりストレスに弱い人もいます。
そういう人は、限界までストレスをためてしまうことがあります。自尊感情の低い人も多く、何もうまくいかない、自分には悪いことばかり起きると思ってしまうこともあります。変化についていくのが苦痛で、自分の気持ちを人に話すことも苦手で、それがストレス対処の最大の障害になっている場合があります。
自分の気持ちを話せば、気分が晴れ、コントロールできなくなるまでストレスを溜め込まなくてすみます。
次のような問題を抱えていると、ストレスに対して立ち向かえないことがあります。
それは、うつ病であったり、ストレスの多い家庭環境にいたり、家族と離れて暮らしていたり、思いがけない動揺するような出来事があった場合などです。
ストレスが生じると、身体は自然に「逃げるか、たちむかうか」という反応を起こします。
初期の人類は、この「逃げるか、たちむかうか」という反応のおかげで、生き延びることができました。
それから何千年たった現代でも、人類の身体は、ある種のストレスに「逃げるか、立ち向かうか」という反応を起こします。心が、「これは、命に関わるような大きなストレスだ」とささやきます。
すると身体に突然ストレスがやってきて、数秒以内に脈拍が速くなり、身体が汗ばんだり、システムが作動しなくなったりします。これは、速く動けるように、無駄な重量を減らそうとする身体の反応なのです。
こうした反応が、たまに短時間起きるだけなら、それなりに対処していくことができるでしょう。
しかし、ストレスの原因になることが多い現代では、ストレスとストレスの間に回復する時間がなく、身体がすり減っていきます。消化機能が衰えて、お腹が痛くなったり、吐いたりすることもあります。頭痛が続いたり、免疫力が弱くなって、病気や感染症に立ち向かえなくなります。
次号は、具体的なストレスの短期的な症状と長期的な症状や、簡単にできるストレス・テストを紹介します。