学園日誌

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10代のメンタルヘルス【9】-3 喪失感

引き続き、10代のメンタルヘルス?H 喪失感 (大月書店) を紹介します。

小さな喪失は、無視されたり、話題にならないことが多いので、自分の悲しみに気づかない場合があります。

喪失がよくない状態を引き起こしているときは、次のようなサインがあります。


  1. まちがいをする。

  2. 元気がない。いつもやっていることに、やる気や興味がなくなる。

  3. 人生に対する見通しが悪くなる。

  4. おろおろしたり、ぼんやりしたり、悲しくて投げやりな気分になる。希望が持てない。

  5. 気分が変わりやすい。

  6. 悪夢を見る。

  7. 集中力がなくなって、なくしたもの以外のことを考えられなくなる。

  8. 食欲がなくなったり、食べ過ぎたりする。

  9. 突然、周囲の人や世界に対して腹を立てる。


こうした症状は、苦痛に対する、知的、感情的、身体的、精神的な気持ちの表れです。

悲しみから逃げようとする人は、喪失がたいしたことではなかったように振舞ったり、酒類や薬物を乱用したり、1日中テレビを見たりします。 自分や他人を傷つけようとすることもあります。

自分の悲しみから目をそらしていると、自分が価値のないものに思え、自尊感情が低くなっていきます。 自尊感情は、自分の価値を位置づけてくれます。 喪失感を認めなかったり避けたりしていると、絶望感が沸いてきて、自分のことが良く思えなくなります。 そうして自尊感情が低くなると、自分の価値を見つけられずに、気持ちがどんどん下向きになっていき、うつ状態になることもあります。



多くのものを失った場合、失望感に慣れてしまったり、自分には良いことなんて怒るはずがない、と思い込んでしまうことがあります。 年をとると、喪失の経験も多くなります。

経験を積むことで、小さな喪失に対して冷静に対応することができる反面、喪失が続けて起こると深い悲しみに打ちひしがれてしまうこともあります。


家庭内や社会の暴力を長く受けているうちに、慣れてしまうこともあります。

しかし、暴力的な環境から離れて、ずっと後になってから、隠していた感情が表れてくることがあります。

これをPTSD(心的外傷後ストレス障害)といいます。

PTSDは、戦争から帰ってきた兵士や、育つ過程でたくさんの喪失に出会った人に起こることがあります。 PTSDの人は、理由もなく怒り出したり、怖がったり、悪夢を見たりします。 不自然な行動をしたり、うつ状態になったりします。 大きな怒りが心に閉じ込められていると、爆発寸前の爆弾のような状態になり、暴力的な行動に走る場合もあります。


喪失の対処の仕方は、主に育った環境によって違います。 10代の子どもや若者は、周囲の大人を真似して感情の処理の仕方を覚えます。 自分の感情をどう対処していったらよいか、その効果的な方法を知らずに育つと、将来、問題が起きることがあります。 喪失においても、前向きに効果的に悲しむ方法を学べば、一生役に立ちます。 その上、人間を強く成長させてくれます。


まず、「喪失は生活の一部だ」 と理解することからはじめます。 悲哀の作業(前号を参照)は、喪失の悲しみや苦痛に対応していく手助けとなります。 喪失感を乗り越えるために、早く良い気分になろうと焦ってはいけません。 喪失の苦しさから逃げ出そうとしたり、全く関係のないことをするのは効果的ではありません。 新たな人間関係を作ろうとしたり、これまでの人間関係を壊したり、高価なものを買ったり、酒類や薬物を乱用したり、学校を辞めたりしてはいけません(うつ状態のときも同様です)。 こうした変化は、一時的に苦痛から気をそらさせるだけです。大きな喪失から6ヶ月から1年以内に、大きな決断をしないようにしましょう。 決断は変化を起こし、悲哀の作業の邪魔になります。苦しくても逃げずに、喪失の感情に向き合っていく方が結果的には良いのです。


喪失感に対処している期間は、健康に気をつけましょう。

水分を多めに取っても健康的な食生活を心がけ、活力が生まれてくるように適度に運動をしましょう。 テレビやコンピューターの前で夜更かしするより、十分な睡眠をとりましょう。

喪失から生まれる悲しみや、そのほかの感情を癒していく具体的な作業を「喪の仕事」と呼びます。 体が健康だと作業はスムーズにすすみます。 毎日決めた時間にリラックスして行いましょう。 喪失感を認めて対処していくには、自分だけの時間が必要です。 けれど自分で塀を囲んで閉じこもってはいけません。 一人になる時間は大切ですが、ずっと一人きりでいないで、みんなと過ごす時間もバランスよくとりましょう。 悲しみを癒していく作業は、自分自身のペースで行えばいいのです。 どのくらい時間がかかるかは、人によって様々です。 この作業に慣れている人は、あまりいません。 悲しみを癒していく作業をしている間は、生活をスッキリさせておきましょう。新しいことをはじめるのはやめて、毎日のスケジュールを簡単なものにします。すっきりさせておけば、混乱も少なくなるでしょう。


具体的には、日記をつけたり、自分の喪失の記録をつける方法があります。

他にも、音楽を聴いたり、読書をしたり、運動をしたり、瞑想をしたり、同じような喪失の経験をした友だちを探す方法もあります。

悲しみを癒していく作業は、焦ってはいけません。 時間がかかる場合もそうでない場合もあるでしょう。 「その人に必要なだけ時間がかかるものだ」 と専門家は言っています。


次号でも、引き続き「喪の仕事」 をみていきます。



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