学園日誌

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10代のメンタルヘルス【10】-2

引き続き、10代のメンタルヘルス10 ADDとADHD(大月書店)について紹介をしていきます。

10代や思春期になると、ADHDの症状は、やわらいだり、変化することがあります。特に多動が見られなくなって、代わりに落ち着きがなくそわそわするようになります。クラスの話し合いに関心を示さなかったり、ぼんやりして見えることもあります。特に10代にとってADHDはつらいものです。通常の思春期のストレスだけでなく、ADHDにも対処しなくてはならないからです。

ADHDは、盲目や歩行障害と同じような障害です。けれど、ADHDの人たちは障害をもっているように見えないかもしれません。慣れない場所に行くと静かでおとなしくなったり、興味のあることなら何時間もやり続けます。ですから、ADHDは本当の病気ではなくて、行動や成績が悪いことの言い訳じゃないのか、と思われたりします。けれど、ADHDが医療を必要とする障害であることは、医師や科学者によって証明されています。ADHDを治療しないで放っておくと、深刻な問題になることがあります。

ADHDの人は、望んで多動になったり衝動的に行動したり、注意が散漫になっているわけではありません。むしろ周囲の望むようにしたいと切実に思っています。けれど、治療をしないでいるとそんな思いも努力も失敗につながります。失敗を繰り返すと、長年のうちに深刻な問題を引き起こすことになります。



学校や職場で・・・勉強が苦手なことが多く、先生の話を聞いたり、指示に従ったり、宿題をすることに困難を抱えています。勉強についていけなくて、学校を辞めてしまうこともあります。

社交の場で・・・同年代の友達の作り方がわからないことがあります。

家庭で・・・勉強や手伝いをするのを忘れてばかりいて親に怒られます。ADHDの子どもが10代になる頃には、親はもうあきらめているかもしれません。

危険について・・・誤った判断をしたり、考えのない行動をして、危険を招くことがあります。例えば、運転では、ADHDでない10代に比べると、スピード違反をすることが多いのです。

自尊感情・・・誤った行動をして叱られることがよくあるので、自尊感情が低くなりがちです。その結果、酒類や薬物を乱用したり、うつ病になったり、犯罪を犯したり、他の問題を引き起こしたりすることがあります。



以前は、ADHDの人は障害ではなく、「悪いやつ」「なまけもの」「頭が悪い」と思われて、責められたり、いじめられたりしていました。しかし、ADHDに関する症状は、何世紀にもわたって記録され、現代では医師や科学者はADHDの原因をより正確に理解しています。アメリカやカナダの子どもは、小さいときにADHDの診断を受けます。そのおかげで、人生に決定的なダメージを受ける前に、ADHDの症状に対処することができるのです。ADHDの人は、悪い人でも、なまけものでも、頭が悪くもありません。創造的で、愉快で、活発な人が多くいます。そして、1つ以上のことを同時に考えることもできます。的確な状況におかれれば、ADHDの特徴は長所として生かされるでしょう。


近年、ADHDの原因がいろいろといわれるようになりました。その中には誤りがわかってきたものもあれば、科学的に証明されはじめたものもあります。けれど、ADHDの原因は、正確にはまだわかっていないのです。1980年代と1990年代に、ADHDはとても注目を集めるようになりました。本、雑誌、新聞記事、テレビ番組などが、ADHDの原因についていくつかの説を立てました。家庭のしつけの問題、学校の環境の悪さ、頭の怪我、糖分の取りすぎ、などはこうした説の一部です。これらの説は、どれも科学的に証明されていないのに、多くの人がADHDの原因だと思い込んでいます。最近では、脳の不規則な動きによってADHDが起きるということが科学的に証明されるようになりました。脳のCTで見ると、ADHDの人とそうでない人では、重要な違いがあるのがわかります。 衝動、注意、他動などは、脳のある部分によって管理されています。 ADHDの人の脳は、この部分の活動が低くなっているようです。 すなわち、こうした行動をコントロールする活動が期待される水準では行われていないということです。 どうして、脳の活動が低下するのでしょうか。 それにはいくつかの理由が考えられます。 ひとつは、ブドウ糖が効果的に使われていないということです。 ブドウ糖というのは、エネルギーを作り出すために身体が必要とてしる糖分の一種です。脳の特定の部分に血液が十分に流れないことも、活動の低下の原因と考えられます。 しかし、もっと大きな原因として考えられるのは、神経伝達機能がうまくいっていないことです。 神経細胞間の伝達を助ける、脳内化学物質が不足していると考えられます。 ですから、治療には、特定の薬を用いてADHDの人の脳を刺激することができます。


ADHDはほとんどの場合、誕生時あるいはそのすぐ後に発症します。研究によると、ADHDの少なくとも半数が遺伝によるものだといわれています。 ADHDを起こす脳の異常の原因となる遺伝子が、親から子どもに引き継がれることがあるのです。ですから家族にもADHDの人がいる可能性が大きいといえます。
ADHDら他に障害が合併したり、二次的障害が起こることがあります。 するとADHDの診断や治療が困難になります。 ある障害と一緒に存在する障害を「合併障害」 といいます。ADHDと合併しやすい障害には次のようなものがあります。 LD、気分障害、強迫性障害、チックなどの不随運動障害などがあります。ADHDの二次的な障害というのは、感情的、社交的、行動的な問題から起こる障害です。例えば仕事や勉強がうまくいかなかったり、周囲の人と仲良くできないことが原因で、うつ状態になったりすることです。 専門家によれば、ADHDは神経生物学的な障害です。 脳に組み込まれた障害ですから、目の色のように、その人を形成しているものの1つと言えます。しかし、ADHDを非行や自制心に欠けることの言い訳にしてはいけません。 本人も家族もきちんと対応していけば、ほかの障害と同じように、ADHDも上手に操縦することができるようになるのですから。


***次号では、診断とコントロールについて紹介します。



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