今月、ご紹介する著書は、4月からの新しい環境・人間関係の中で、もしかすると少しお疲れ気味のこころを、ほぐしてやわらかくしてくれそうな、やさしくって知恵に富んだ著書だと思います。
『谷川俊太郎 質問箱』です。谷川さんに寄せられた、たくさんの人からの、たくさんの質問提起に、皆様も、自由に想いを馳せてみてください。
では、こんな質問をされたら、どんな風にお答えになるでしょうか?
Q.私は「たわいのないおしゃべり」ができません。いつも人とのこととか、まじめな話ばっかり。
どうすればみんなみたく楽しいトークができるようになりますか。(もみじ 24歳)
Q.どうにもコッパズかしくて、自分のじいちゃんに優しくできません。
話をしてても、寝転んだままぶっきらぼうに「・・・・・んん」ってしか返事できません。
「からだに気をつけて」とか「長生きしてね」とか絶対言えません。肩たたきもできない。
まえ、じいちゃんが死んじゃった夢を見たとき、「ちっとも優しくできなかったのに!」ってすごく後悔して、大泣きしたのに。
どうしたらじいちゃんたちが喜ぶように、優しくできるんでしょう?(okam17 22歳)
Q.どうして他の人がうらやましくなるの?
私はいつも、人と自分をくらべて落ち込みます。 私は私、と思いたい。(あど 25歳)
Q.どうしてともだちとあそばなくちゃいけないの?
わたしは、ひとりでぶろっくであそぶのがすきなのに、
せんせいが、おともだちにこえかけてごらん、といいます。(ゆう 4歳)
Q.彼女の機嫌を直すには何がいちばん効果的ですか?(まる 20歳)
Q.心の中の鬼はどうやって退治しますか?
谷川さんの心の中にも、鬼がいますか?(しらたま ?歳)
問いかけるだけで終わるのもなんですので、谷川さんのお答えつきの「質問」も紹介します。
Q.どうして、人間は死ぬの?さえチャンは、死ぬのいやだよ。(こやまさえ 6歳)
横に、追伸として、「これは、娘が実際に母親である私に向かってした質問です。
目をうるませながらの質問でした。 正直、答えに困りました?」と書かれています。
母親からの追伸でしょう。
谷川さんの答えは・・・
A.ぼくがさえちゃんのお母さんだっら、「お母さんだって死ぬのいやだよー」と言いながらさえちゃんをぎゅーっと抱きしめて一緒に泣きます。その後で一緒にお茶します。
あのね、お母さん、いつも言葉で答える必要はないの。
こういう深い問いかけにはアタマだけじゃなく、ココロもカラダも使って答えなくちゃね。
Q.自業自得で苦しいとき、誰にあたることもできず、言い訳もできず、というとき、どうやってその苦しさに立ち向かいますか?
しかたなかったんだとか、相手のせいにしたりとか、逃げ道はあるのですが、どうも妥当だとは思えません。(ドロナウ ?歳)
A.苦しいのも生きている味わいのひとつだから、苦しみのグルメになれるといいなあ。
苦しみや渋みや刺すような辛さに、かすかな甘みも混じっているその複雑な味を知ると、喜びの味も深まるからね。この質問には、古今東西の様々な宗教が答えを用意していますが、それはあんまりあてにしないほうがいい。お金取られたりするからね。
「違う日に訊かれたら違うことを言うかもしれない。その危うさも丸ごとおもしろいんですよ」と谷川さんは答えています。そのライブ感が、また、ステキです。
谷川さんの答えは、さすが、「詩人から届いた答え」で、『質問箱』がまるで「宝物箱」のようでした。
また、谷川さんは、誰にでも、「普段は殺して抑圧しているけど詩人的な資質」があると、うれしいことを、言ってくれるではないですか。
誰か(たち)と一緒に、あるいは独りで、我が詩人的な素質を解放して、『私の質問箱』を創る時間も、また、ステキではないでしょうか。