学園日誌

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不登校の開放 家族のシステムとは何か(2)

 今号も、引き続き、『不登校の解法 家族システムとは何か』(文春新書 団士郎著)を紹介します。<問題が問題なのではない。問題解決が問題なのだ>が、問題と無効な解決努力の堂々巡りに、何か一つ異なる方法を示唆してくれることを期待します。先回は、「決定」という大切な行動から、家族の関係を見ようとしました。今号は、「決定」という特別なシチュエーションでなくとも、基本的な「反応」は至る所に表われており、時にはそれを助長する「境界」という構造を知ることが家族の理解に役に立つことを見ていきましょう。


 


 


…人は誰でも、自分と周りの人たちの間で情報の交換をして生きています。そのありようがその人たちの関係です。中味は重要なテーマから他愛無い噂話までいろいろです。また情報交換は必ずしも言葉によるとは限りません。態度や姿勢や表情、そして何よりそういったもの全体の量が、その人たちの現在の関係だと言っていいと思います。極端に反応が乏しかったり、焦点がずれていったりするのも、その人たちの関係を表しています。逆に周りの反応が過剰だったり、不適切な反応で固まってしまっている家族もあります…家族に限らず、自身は他者に対してどんな「反応」をとってしまうか、自分の学校では?、職場では?と、振り返るのにとても役に立つ視点だと思います。


そして、家族は思い切りよく二分してしまうと、「バラバラ型」と「もつれ型」に分けられます。バラバラ型は個々人の自立、独立性は高いのですが、協力したり結集したりが苦手です。一方、もつれ型は、絡み合って、まとわりつくような濃密な関係の家族のことです。保護や共感性は高いのですが、その関わりの質や量が適切かどうかのチェックが弱く、必要な時にも分離できにくいことになります。この二つの特徴は、長い子育ての間には共に必要なものです。親子の自然のなりゆきを見ていますと、子どもの小さい間はもつれ気味に、大きくなってきたらややバラバラ気味になるのは当然に思えます。両方の要素を子どもの年齢に合わせてうまく実行してゆくのが自然で望ましいことです。しかし、人に得手不得手があるように、家族にもそれがあるのです…何か問題が起こった時、どうすれば解決できるのか簡単には分かりません。しかし何かがあった時、それを受けてできることから試みてみる、その姿勢は思った以上に大切なようです。うまくいくかどうかは運命かもしれません。しかしそれに向けて必要だと思う反応を起こすことは、どの家族にもできることです。…反応の量と質ですが、これが適量な正しい反応だと断言できるものではありません。しかし、反応の適切、不適切の問題では、簡単に言ってしまえば、ワンパターンに陥ってしまっているのが不適切で、いろいろあるのが適切です。いろんな人がいていろいろなことがあのある世の中で、子どものことになると、いつも同じような騒ぎ方をしてしまうのが落とし穴です。


 


 …境界について、人と人との境界はどんな風でしょう。他人のものと自分のものは、同じ製品であっても区別されています。名前が書いてあるから区別できるだけのことではないでしょう。また、所有物ではないけれども、特定の人が日常的によく使っている座席や、場所はどうでしょう。やはりそこには目に見えない線引き、棲み分けが行われています。また多くのものの内と外も区別されています。目に見える仕切りでもあればわかりやすいのですが、実際はあいまいであるにもかかわらず、内外ははっきり意識されています…このように境界とは、在るようで無く、無いようで実ははっきりと存在する、そんな摩訶不思議なもののようです…ここでも、自身と様々な他者との境界、あるいは自身が他者一般との間に持ちやすい境界について思いを巡らせてみてはどうでしょうか。同様に、家族において、内と外とはどうでしょうか。


 


上記の「反応」「境界」はストレス場面においても顕著です。…思いがけないことが起こって場の空気がなんとも言えない緊張をはらんでいます。みんないたたまれない思いで沈黙の中にいます。心の中では誰か何とかしてほしいと叫んでいます。あまりこういう場面には出くわしたくないものですが、生きている限りこういった事態に巻き込まれることも止むを得ません。できることならそんな居心地の悪さは、一刻も早く解消したいものです…家族の面接をしていると、時々こういったストレス場面に遭遇します。しかしストレスはさっさと片付けたらいいだけのものでしょうか。確かにその場に居合わせた家族は居心地の悪い思いをさせられています。しかしそれは決して無意味ではない。むしろこの緊張もまた、何かを育てるのに重要な役割を持っているように思えてならないのです…笑い、気配りのききすぎた豊富な話題、一見思いがけない、そのくせ繰り返されているハプニング、これらは、家族が共有する場にストレスが高まるのを避ける働きをしています。ストレスを上手に避ける術も生活の知恵ではあります。しかし一方で、そういった事態をしっかり引き受けて対処するのも、ぜひ持っていたい能力です。


原因探しではなく、家族の作りだしているシステムをいろいろなアングルから数多く見つけ出してみませんか。



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