学園日誌

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ペアレント・トレーニング3

 今号も引き続き、野口啓示著『むずかしい子を育てる ペアレント・トレーニング 親子に笑顔がもどる10の方法』(明石書店)をご紹介します。


 


今号では、実際に落ち着きを取り戻すプランを作成してみましょう。どのような状況で自分が失敗してしまうのかを整理し、できることを計画しておくことは、成功への第一歩です。ここでは、3つのステップをどのように行うかのプランを作成します。以下の(   )を埋めていきます。


 


1.    状況の整理     次に(          )が起こったとき、


2.   体の変化を察知   私が(     ) を感じたら、


3.    リラックス     私は(          )をして落ち着きを取り戻します。


 


あるお母さんは次のようなプランを作成しました。このお母さんは、兄弟げんかをやめさせるのに、いつもお兄ちゃんばかりを怒っていました。お母さんは、お兄ちゃんの意見も聞かなきゃと思っていましたが、お兄ちゃんが小さい弟を叩くので、瞬間的に怒っていました。この状況を変えるために、以下のようなプランを作成しました。


 


1.    状況の整理  次に(兄弟ゲンカが起こり、弟の泣き声)が起こったとき


2.    体の変化を察知  私が(もうまたかと思い頭に血が上るの)を感じたら


3.    リラックス 私は(まず水を飲み)、落ち着きを取り戻します。


 


このように落ち着きを取り戻すプランを作成していると、落ち着きを取り戻すための具体的な行動が取りやすくなります。では、自分が失敗してしまう状況を思い出し、ぜひ一度、実際に落ち着きを取り戻すプランを作成してみてください。そして実行してください。でも、「せっかく作ったのに、失敗してしまった」ということもあるかもしれません。根気強く頑張っていきましょう。


 


 次には、この落ち着きを維持するセルフコントロールを子どもとも共有していきましょう。


 この方法を子どもに教えないといけない状況というのは、いわば、親子間の緊張が高まった危機の状況です。危機の状況はいわば一種のパニックの状況なので良いことを生み出しにくい状況です。後で考えるとどうでもいいことでも、その時は重要な問題になっています。親子間の緊張が高まるのは何も子どもがものを叩いたりするといったはっきりとした行動の爆発だけではありません。子どもに何を言っても固まったままになっている状態も指します。親にとっては固まっている状態は親への挑戦と映るかもしれませんし、そのように子どもの行動を見てしまうと、無性に腹が立つものです。そして、この状況は、確実に親子間の緊張を高めます。でも、なぜ子どもは親に挑戦するのでしょうか。


 子どもが親の言うことを聞けない状況というのは、子どもが自分の感情のうねりをうまく扱えないことから生まれます。子どもは、大人よりセルフコントロールする力が弱いので、感情が高まると、反抗したり、泣き喚いたり、すねたりといった行動が出やすくなります。興奮してくると、人の言うことは聞こえなくなります。感情的になって言った言葉や行動に後悔し、自分自身に腹が立つという経験は皆しています。感情と感情がぶつかるとき、そこには良いものは生まれにくく、憎しみが生まれやすい状況になります。ここで必要なのは、お互いに落ち着きを取り戻す作業です。


 ここでのゴールは、子どもを落ち着かせ、そして親自身も落ち着き(子どもを落ち着かせようと思うと、親がまず落ち着かなければならないかもしれませんが)、子どもが興奮したときに、どのように振る舞えばよいのかを教えられるようになることです。ここでのステップは、第1ステップ「まずは落ち着く」第2ステップ「セルフコントロールを教えるフォローアップ」の2つからなります。


 第1ステップの「まずは落ち着く」は、子どもが指示に従わないので、緊張が高まってくる状態で、


1.    親自身が落ち着くためにするリラックスを実行


2.    落ち着くための指示を与える


3.    落ち着くまでの時間を与える


といった3ステップからなります。そして親子ともに十分落ち着くまでの時間を取った後で、第2ステップの「セルフコントロールを教えるフォローアップ」に進みます。


1.    共感的表現


2.    状況を説明する


3.    落ち着くためのリラックスを子どもに教える


4.    落ち着くためのリラックスを練習させる


5.    元の問題に戻る


といった5つのステップからなります。


 


 次号では、上記の二つのステップを具体的に紹介します。また、子どもの発達と親の期待についても考えたいと思います。



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