対局は全部で六局。人間対コンピューターの世紀の対決が始まりました。
第一局はカスパロフが先手になります。先手はテニスのサーブ権と同じでチェスでは有利とされています。
ディープブルーにはおよそ五百年に渡る序盤の定石がすべてデータとして入力されています。それに加えて駒ごとに点数をつけて、相手の駒はマイナス自分の駒はプラスとして計算し、その他にキングの安全度や駒の配置などを加えてすべての局面に点数をつけて十数手先の未来の最高点を検索し、今度はそこから逆にさかのぼり、その局面に行くための次の一手を決定していきます。
そこでカスパロフは意外な手でディープブルーに対抗しました。
カスパロフの駒は相手の駒を避けて四段目より上に進みませんでした。常識では考えられない非接近戦です。駒と駒がぶつからないとディープブルーがはじき出す未来の局面の点数に差が生じることが少なくなりミスが出やすくなります。
カスパロフの作戦は見事に的中し、第一局はカスパロフの完勝に終わりました。
そして翌日、第二局が始まりました。
今度は先手はディープブルーになり、何百年にも研究されたてきた展開にカスパロフを誘い込んでいきます。一局目と同様に非接近戦をめざすカスパロフですがなかなかできません。どうして駒と駒がぶつかり合ってしまい非接近戦に持ち込めません。
そしてこの勝負の最大の山場がやってきます。盤上の駒の数は互角、ディープブルーがわずかに有利という局面した。そのディープブルーの36手目は最強の駒クイーンをカスパロフ陣内に送り込む大きな一手のチャンスでした。