学園日誌

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ペアレント・トレーニング4

 今号も引き続き、野口啓示著『むずかしい子を育てる ペアレント・トレーニング 親子に笑顔がもどる10の方法』(明石書店)をご紹介します。


前回は、親自身が落ち着き、子どもを落ち着かせ、そして子どもが興奮したときにどのように振る舞えばよいのかを教えられるようになる手順を追いました。それでは、このステップを具体的に見てみましょう。


 


姉(あやね)が妹(かな)のおもちゃを勝手に使って壊してしまったという状況で父親が注意をします。


父「あやねちゃん、ちょっといい」


あやね「うん」


父「かなちゃんが泣いているだろ。かなちゃんに聞いたんだけど、あやねちゃんはかなちゃんのおもちゃを勝手に使って壊しちゃったんだってね。謝りもしないで、出てくるなんて、いけないだろ」


あやね「でも、いつもかなちゃんは私のものを勝手にさわるんだもん」


父「だからって、さわっていいということにはならないだろ。今回は壊したんだから、まずは謝りなさい」


あやねは父の言葉をさえぎるような感じで、


あやね「なんで、わたしばっかり怒られないといけないの。かなちゃんだって悪いんだよ。ちっさいからって調子にのっているんだもん」


父「お父さんに怒っても仕方がないだろ!」


と怒鳴りました。あやねは「・・・」と固まってしまいます。このように緊張感が高まった状況で、いよいよ自分自身をコントロールする2つのステップを使います。


 


第1ステップ【まずは落ち着く】


1.    親自身が落ち着くためのリラックスを実行


父、まずは大きく深呼吸し、落ち着きを取り戻す努力をする。


2.    落ち着くまでの指示を与える


父「どうしたの?話ができそうにないね。部屋に行って落ち着きなさい」


3.    落ち着くまでの時間を与える


あやね、部屋へ行き、父と離れる。しばらく間があって


父「あやねちゃん、話せるかな?こっちにおいで」あやねが来る。


 


第2ステップ【セルフコントロールを教えるフォローアップ】


1.    共感的表現


父「あやねちゃん、あやねちゃんの気持ちもわかるよ」


2.    状況を説明する


父「でも意地を張っていてもしょうがないだろ。おもちゃを壊してしまったんだから、謝ろう。謝れるね」


あやね「うん」


3.    落ち着くためのリラックスを子どもに教える


父「そうだろう。落ち着いて考えたら、できることなんだよ。だから、これからは、いやだと思って意地を張りそうになったら、こうしたらいいよ。まず、深呼吸して、10数える。そうしたら、落ち着いて考えられるようになるからね」


4.    落ち着くためのリラックスを練習させる


父「じゃあ、一度やってごらん」


あやね「しないといけないの?」


父「そう」


あやね(深呼吸をして)「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」


5.    元の問題にもどる(悪い結果)


父「これでいいよ。覚えていてね。さあ、まずはかなちゃんに謝りに行こう。それから、どうしたらいいのかをお父さんと考えよう」


 この危機介入で一番大切なことを、時間を取って行うということです。焦ってしまうと、元も子もありません。落ち着いて、時間をかけて行いましょう。危機介入を実施するときは、親子間の緊張が高まっている状況です。親自身の振る舞いにも注意してください。子どもを指差すことや、子どもに近づきすぎること、こぶしを振り上げることは子どもに脅威と映り、子どもをより感情的にさせることにもなりかねません。(←子どもが、どのような刺激に対して、どう反応するか、を具体的に知っておくことは子どもの理解と対応を考えるときにとても役に立つ大切なことです)小さい子どもの場合は、そういった親の行動の結果、固まることしかできないことにもなりかねません。そひそして一度固まってしまうと、その固まる行動をほぐすのに時間が必要なのです。


 そのほか、「○○をしたらダメ」と否定的にしつけるのではなく、「○○の代わりに△△した方がいいよね」と肯定的なものを評価していくという姿勢が親子関係を良くしていくことや、問題解決に向けてうまく話し合っていく方法についても紹介されており、時には多くの時間が必要となるかもしれませんが、ぜひ家族みんなで取り組んでもらえたらと思います。



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