学園日誌

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学園日誌

誤解する子、言えない子

 今号より、『決定権を誤解する子、理由を言えない子』(かもがわ出版)を紹介していきます。発達障害がある子に誤解をもたせない育て方のポイントをお伝えできればと思います。


 


 本著は「積み重ねではなく、いつも積み直しです」というあるお母さんのひと言が今も胸に残っている、という書き出しから始まっています。胸に突き刺さる言葉です。しかし先日、「発達障害は発達する」という言葉に出会い、専門家は治らないと言うけれど、確かにみんな発達している、と感動もしました。では、この発達支援という視点から、何ができるでしょうか。問題行動などは発達をベースに考えるとともに、「未熟」と「障害」を分けて考えることが大切です。未熟が原因ならば教えれば学ぶことができます。障害から起こるものであれば、支援の在り方を工夫します。そのかかわりの際に重要なポイントですが、本著は子どもの姿について紹介するとともに、対応を考えていきます。問題とされる行動ですが、言っても分からない、反抗挑戦的である、自分勝手に行動する、乱暴するなどその内容は様々です。しかし、それらの行動の中には、「決定権を誤解している」「理由がわからない、言えない」「社会的感情が育っていない」というこの三点に原因があることが少なくないのです。


 


<決定権の誤解>


なぜ、大人は決定権を誤解させるのか。「先生は命令ばかりする」と腹を立て指示に従わない男の子がいます。お母さんはこれまで彼のことを、自分で何でも決めたがる子と思ってきたようです。そう思いつつ、男の子だから自分の意思を強く持ち、押し通すことがあってもいいと考えてきました。彼のお母さんばかりでなく、親は自分の意思を押し通す子どもの姿を見て、「成長した」という誤解を持つのかもしれません。決定権を、子どもに最初から全て与える大人はいないでしょう。例えば、お小遣いの額ですが、年齢に合わせて少しずつ増やします。そうやって、子どもの裁量権を徐々に広げていき、大人の金銭感覚が持てるように育てていきます。決定権は、お小遣いと同じように、様子を見ながら徐々に子どもに広げていくことが大切だと思います。


 


<指導の際の重要ポイント>


1.身の回りのことを、自分でできるようにする


自己主張は「自己形成」に必要なプロセスです。ただし、自分の身の回りのことは全部大人に頼っていて、やりたいことだけは主張する、というのでは「わがまま」なだけで自立に向かっていけません。


 


2.「自分のもの」と「ひとのもの」を区別する


「自分のもの」と「他人のもの」を区別することは、「自他の区別」を促します。自分のかばんを自分で持つ、洋服を自分で用意するなど、自分の者は自分で扱わせるようにしましょう。同時に「ひとのものを勝手に使わない」ことも教えます。そして、許可を得てはじめて使える、もらえるといった経験が重要です。また、「くれるかどうかは、相手が決めること」だと実感することが大切です。


 


3.大人が決めるべきことと、子どもが決めていいこと


この点は大人が決定権を持つべき、という基本的な事柄があります。まずは、寝る時間・起きる時間・ごはんの時間・帰る時間など、時間に関すること。もう一つは、お金に関することです。時間やお金については、大人が決定権を持ち、小学生の間に基本ルールを教えておくようにします。そうすると、中学生以降、子どもにある程度任せられるようになります。


 


4.相手にペースを合わせ、いっしょに活動できるように


何でも自分で決めてやろうとする子は、人と一緒に活動した経験が乏しく、ペースを合わせるのが苦手です。一緒に活動する楽しさを知らないという子もいます。まずは簡単なことから、人と一緒に活動する経験をしましょう。本著では、「大人と一緒に歩く」ということが薦められていました。


 

 次号では、理由を言えない子どもについて見ていきたいと思います。


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