学園日誌

diary

学園日誌

誤解する子、言えない子 2

 今号は、引き続き『決定権を誤解する子、理由を言えない子』(かもがわ出版)を紹介していきます。理由を言えない子どもについて、また、理由と社会性の発達について見ていきたいと思います。


 「理由が言えない、わからない」子どもによく見られる姿をいくつか紹介します。


 


●会話でイライラしやすく、ケンカが多い(理由づけがわからないので、話の意味がよくわからない。相手は理由をつけて提案しても、一方的に指示された、命令されたと思い込む)


 


●すぐに「はい」「わからない」(会話が進み理由を聞かれるのがイヤ)


 


●自分の考えをまとめられない(理由を考え、表現できない)


 


●人の考えがわからない(相手の考えの背景にある、理由の存在や内容が理解できない)


 


 理由の意味が理解できるかどうかは、言葉の発達とも大きく関係しています。疑問詞の理解で言うと、「何?」「誰?」に答えられるようになるのが一歳、「どこ?」が二歳、「どうやって?」が三歳代に獲得されると言われています。そのころから「なんで?」「どうして?」としつこく質問してくるようになります。その後、子どもが「なんで?」「どうして?」に適切に答えられるようになるのは四歳後半とされています。「なんで?」「どうして?」と考えられない一、二歳の子に、理由をつけて話しても理解できません。発達に遅れがあって、言葉の発達が一、二歳の段階にとどまっている場合も同様です。子どもの言葉の発達段階がどの程度なのかを確認したうえで、話し方を変えていく必要があります。その際、どの疑問詞に子どもが答えられるのか、どの疑問詞を子どもが使っているかが、発達段階を見極める一つの目安になります。


 また、理由についても段階があります。例えば、子どもに好きな食べ物について質問するのはごく当たり前のことです。答えによって、好みなども含め、子どもへの理解が進みます。もう一歩踏み込んで「どうして好き?」と聞いてみたくなります。子どもなりの考えを知りたいからです。ところが、「どうして」と聞くと黙りこんでしまう子がいます。「どうして?」にピントのずれた答えをして平気な子どももいます。子どもの答える理由表現ですが、発達の段階によって変化します。


 


1.理由を言えない段階


理由表現ができない段階です。繰り返し理由を尋ねるとイライラや混乱を招くこともあります。また理解できない説明を受ける経験が積み重なると、人の話を聞き流す習慣がつく恐れもあります。


 


2.理由が相手への説明になっていない段階


「好きだから」「好き」と答える段階です。自分の感じのみの表現で、質問分の単語をマネしている場合もあります。一般的には三歳代の表現です。この時期は理由を付けずに「お外に行きたい!」などと要求してきます。理由を聞いても「行きたいから行こうよ」となり、相手にわかってもらえるような表現ができません。また、衝動的に見える言動も目立ちます。理由をもとに判断せずに、直観的に行動しているからでしょう。


 


3.理由の内容が、一般的に考えて了解できる段階


「おいしいから」「楽しいから」といった内容です。大人にも了解できる内容です。四歳代から表現できるようになります。ただし、教わったことを言っているだけだと感じることもあります。


 


4.理由の内容が、一般的な知識や道徳になる段階


「からだにいいから」「お年寄りに席をゆずってあげるのは善いことだから」など、知識として学んだことが、言動の際の理由になります。このように、一般的な知識や道徳をもとに行動できるようになると、周りの人との共通の考えを持てる場面が増え、人との関係も安定してきます。


 


5.理由に他者が入る段階


「みんないいといっている」と自分だけの理由ではなく、他の人の意見を添え強調します。多数の考えであることや、権威のある人や本などを論拠にしたりします。小学校の初めから中ごろにかけて聞かれ出します。子どもによっては、長くこの段階が続くことがあります。


 


6.理由を自分流に表現する段階


自身の体験や知識を入れ、自分なりに考えた表現となります。一般的には小学校高学年から中学生にかけて増えていきます。


次号では、理由の教え方、続いて社会的感情の育み方を紹介します。


 



ホーム