学園日誌

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誤解する子、言えない子 3

 今号も、引き続き『決定権を誤解する子、理由を言えない子』(かもがわ出版)を紹介していきます。今号では、理由の教え方、続いて社会的感情の育み方を紹介します。


 


 理由の意味や役割を理解し、理由を述べられることは、人との関係を安定させるうえでも、適切に判断して行動する上でも、大変重要な力です。理由を教える際の留意点を考えてみましょう。


1.選択肢を挙げ、選ばせる


「好きだから好き」など、理由が相手への説明になっていない段階の子には選択肢を選ばせる方法が有効です。


 


2.質問紙形式


絵カードやドリルを使い、さまざまな場面での理由を教えていきます。ただし、絵カードやドリルでは答えられても、実際の場面では答えられない場合があります。ドリルで覚えたことは、なるべく体験させ、そこで「どうして?」と質問してみましょう。ドリルでの学習と体験を結び付けていくことで、子どもは理由を自分のものにしていきます。


3.日記などで、経験を振り返る練習をする


理由を適切に言えるためには、自分の経験を振り返ったり、考えをまとめたりする力が必要です。それには日記などが有効です。


 


4.どんな時に、理由を聞くのか


筆者の経験では、子どもが悪いことをした時に理由を問いただすことが圧倒的に多いように思います。反省を促そうとしてのことなのでしょう。しかし子どもにとって都合の悪いことばかり理由を聞かれるのでは「理由を聞かれる=責められる」と感じてしまいます。それでは理由を答えようという気も失せてしまうでしょう。中には、理由というよりは言い訳と思えるようなことばかりを覚えてしまう子もいます。理由をうまく言えないうちは特に、楽しいことについて理由を聞いてあげるようにしたいものです。


 


5.理由のみを言って、結論を省略していませんか?


廊下を走る子に対して、「ほら、危ないでしょ!」と注意します。これは「危ないから走っちゃダメ」の意味です。このように、理由のみを言って


取るべき行動を省略した表現を大人はよく使いますが、なるべく省略せずに伝えることが子どもの誤解を減らすことにつながることでしょう。


 


 続いて、社会的感情の育て方を紹介します。「好き」「嫌いといった個人的感情から、「恥」「罪」「誇り」「尊敬」「畏服」などとぃった社会的感情の世界への成長が求められます。そして、社会性はコントロール力の発達が不可欠なのです。では、子どもが感情を自分でコントロールし、社会的感情を育てていくためにはどうすればいいでしょうか。


1.睡眠などの生活リズムを整える


子どもが初めて獲得する自己コントロールです。たとえ子どもが嫌がっても、大人が努力して環境をつくること、それが大人の役目だと思います。


 


2.乱暴や泣き騒ぎでの要求は通さない


大変ではありますが、とんなに泣き騒いでも「ダメなものはダメ」「やらなくてはならないことはやる」と対応していくことが大切です。その際、大人の対応は一貫すること。


 


3.嫌いなことにも挑戦し、乗り越えた経験をする


子どもたちの頭は柔軟です。「嫌い」と言っていても、できるようになると「平気」「好き」にコロッと変わってしまうこともしばしばです。また、嫌いを乗り越えてできるようになった時一番誇らしい表情を見せてくれると感じます。


 


4.お手伝いなどで、お兄さん、お姉さん意識を育てる


「お兄(姉)さん意識」は誇りや自信の源になります。


 


5.練習を重ねて「上手になった」経験をする


「憧れ」や「上手になりたい」という気持ちを育てるためには、何か目標を決めて取り組むものを見つけましょう。はじめは、なかなかうまくいかなくてかんしゃくを起こすかもしれません。そうした場合は「今日の目標はここまで」と目標をスモールステップで示してあげると意欲がわきやすくなります。


 


最後に、当たり前のことですが、子どもに何かを教える際には、子どもを「大切と思う気持ち」を何よりも大切にしていきたいと思います。



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