学園日誌

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学園日誌

東日本大震災に関して

 今号は、東日本大震災に際し、子どもたちの心を支えるために周りの大人たちが知っておきたいことをお伝えしたいと思います。被災地以外の学校でも、生まれて初めて体験した大きな揺れや、それに続く被災地の大変な状況のニュース、とりわけ映像による被災状況等にショックを受けた子どもたちが、不安な気持ちを抱えて保健室に集まってきたり、原因のわからない体調不良を訴えたりして来ているそうです。また、災害というものは、いつ何時、自分に、また自分の身近に降りかかるか分かりません。その時の備えのひとつとして、知っておいていただければとも思います。


 


まず子どもたちを安心させよう。そのためには…


1.「今」は安全であること、ひとりぼっちでないこと、事態は変化していこうとしていることを伝えてあげてください。


 


2.子どもからの質問には、面倒がらずに耳を傾けてください。子どもの年齢なりに、また性格や経験、知能に応じて様々な疑問があります。時に、どんなことも大人に質問していいという雰囲気をつくることは難しいことがあります。答えがわからなくなったり、大人が絶望していたりする時がそうです。答えが分からなければ、分からないと言ってもいいのです。そっとそばにいたり、体をなでるだけでもいいのです。「よく聞いてくれたね」と言ってあげましょう。それから、絶望しているときには、大人も誰かに話しかけて、不安や疑問を出してみることをお勧めします。なによりも、子どもに対して「そんなこと聞くな」「知らなくていい」という返答はしないように。また、繰り返し同じ質問をしてくることがありますが、こうやって子どもなりに不安に立ち向かおうとしているので、同じ答えでいいので淡々と答えてください。


 


3.いくら事実だからといっても、子どもの年齢や性格を考慮して、むやみに不安をあおるような情報を提供しないよう慎重に言葉を選んだり表現を選んだりしてください。子どもが疑問に思っていないことや聞いていないことまで詳細に語る必要はありません。大人が、情報の解釈を押しつけたり、偏った情報や少ない情報で結論を急いだりしないようにしましょう。しばしば、大人の方が不安なので、このように話してしまうことがあります。大人がやわらかい心を持つことを意識しておきましょう。


 


4.ドキドキしたり、気持ち悪くなったりといった身体症状や、怖いことばかり考えたり、怖い夢を見たりということがあるかもしれません。でも、そうしたことはおかしなことではないと安心させてあげてください。異常な事態での正常な反応です。大人が「おかしくなってしまった」と心配したり、認めまいとすると子どもはもっと不安になります。一か月を超えてまだ以前の様子と違うようであれば、専門家が必ず力を貸してくれます。


 


どんな気持ちも否定しないでください。


「くよくよするな」「気にするな」などと言うと、子どもは自分の気持ちをどうしたらいいかわからなくなります。どんな気持ちも彼らの一部です。「そんな気持ちになっても当然だよ」と答えた後で、「でも、今、たくさんの人が安全な状況になるために協力してくれているからね」と他者への感謝の気持ちを表してください。こういう時に、子どもは大人が感謝の気持ちを持っていることを知ることで勇気を持てます。


 


できるだけ不必要なへんかをしないように。


つまり日常の習慣、例えば夕飯前は手を合わせて「いただきます」で始めるとか、寝る前の儀式的なものなど、できる範囲で「いつもどおり」を大切にしてあげてください。普段使っていたり、以前に好きだった毛布やぬいぐるみなどもそばに置いていおきましょう。排泄や、食事、睡眠時に赤ちゃんがえりをすることがあるかもしれません。いつもはひとりでできることができなくなったり、ささいなことで泣きだしたりすることがあるでしょう。大人は怒ったりせず、そのまま受け入れてあげましょう。もちろん、普段していたお手伝いも、無理のない範囲でしてもらい、できる範囲で日常習慣を継続できるようにしていきましょう。


 


テレビの被災地の映像に長時間さらさないようにしてください。


こんな時期にと思われるかもしれませんが、アニメやビオを見る機会を与えてください。これは大人にも大切なことです。このような状況では誰もが無力感を味わいます。そんなとき、「選択できること」というのはコントロール感を少しだけ取り戻せます。「この番組しか見ない」「今はこれを見なさい」などと決めつけないように。


 


大人自身が自分を大切にすることです。


こうした災害によって心が傷つくことがありますが、全員がPTSDになるわけではありません。傷つくけれど、人間に備わっている回復力によって、心の傷を乗り越えることはできます。その力を発揮できるようにするためにも、大人自身も自分を大切にすることを意識してください。また、大人も違う番組を見たり、テレビをしばらく切ったりするようにします。不安は興奮状態を引き起こし、「自分は元気」「むしろ普段より何かやれそう」などと思いがちなのですが、心はとても疲れています。時間を見つけて少しでも横になるようにしましょう。



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