学園日誌

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学園日誌

S・ジョブズが愛した「弓と禅」  Part2

 数ヶ月のち、ヘリゲル氏は自分で納得いく射ができたそうです。そして、ゆっくりと時間をかけ習得したように阿波師の前でやって見せたそうです。すると阿波師はヘリゲルさんに近づいて黙って彼の手からその弓を取って片隅に置いたのです。

 つまり、ヘリゲルさんは阿波師から褒められたい、認められたいという私欲に取り付かれていただけだったのです。師は「あなたは精神的な射には到達できない」と言われたそうです。それからヘリゲルさんは深く反省し、無心の境地を目指して、呼吸法と正しい礼法にだけに集中し徹底的に基礎稽古に励んだそうです。

 そして一年後のある日、あるとき、ヘリゲルさんは完全に認められる射に初めて成功しました。その射の正しさを問われてもヘリゲルさんにはわからない。しかし、それを機に良い射と悪い射の違いを感じられるようになったそうです。良い射とはヘリゲルさんの意思で放たれるのではなく自然と放たれるというのです。離れといわれる矢を放つ瞬間が身体に下りてくる感覚だったといいます。
 ここでようやくヘリゲルさんに正式な的が与えられます。それまではわずか二メートルほど先にある藁束にめがけて稽古を積んでいたというのです。
 どこまでも深い武道という境地の先にある神秘的な力の入り口にようやくヘリゲルさんは立つことができました。そして『それ』との遭遇の時がやってきます・・・・
 look forward to next、again (ふたたび次回をお楽しみに)


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