学園日誌

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AIがつくる未来  Part6

 
いよいよ最終戦の第六局が始まりました。この勝者が世紀の頭脳対決を制することになります。しかし、対局が始まってわずか8手目にカスパロフは初心者のような大きなミスをしてしまいます。

バルボ氏は言います。「カスパロフは駒を動かす順番を間違えたのです。Aという動きをしてからBとするところを逆に動かしたのです。それはほとんど初心者レベルのミスでした。それではカスパロフに勝ち目はありません」

シリコンと金属でできたディープブルーには疲れも焦りも喜びも悲しみもありません。ただ勝負に勝つためだけのチェスマシーンです。確実に、そして冷酷に世界チャンピオンを追い詰めていきました。わずか17手目でカスパロフは負けを認めました。ついに誰もが不可能だと考えていたカスパロフを打ち破るコンピューターが出現したのです。

それから二十数年が経ちました。わたしたちのほとんどの手にスマートホンがあります。それによってAIを駆使したサービスに生活全般が依存しつつあります。スマホで伝えられてくる情報を間違いないものだと信じ、あらゆるものをワンタッチで手に入れられるようになっています。

ディープブルーよりもはるかに進化した現在のスーパーコンピューターに「高齢化社会の対応策を検討せよ」というコマンドを入れたところすぐに答えが出てきたそうです。その答えとは「総合病院をなくせ」というものだったそうです。

あらゆる過去のデータをすべて組み込んだスーパーコンピューターですからその答えは限りなく正解に近いものであることは間違いありません。しかし「なぜそうなるのか」という理由がわたしたちの誰一人として理解できないのです。そんな時代になってきているのです。

「マジで怖い」生徒のひとりが言いました。その言葉はその子だけのものではありません。わたしたち全員の声のはずです。


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