学園日誌

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学園日誌

ペアレント・トレーニ ング

今号は、野口啓示著『むずかしい子を育てる ペアレント・トレーニング 親子に笑顔がもどる10の方法』(明石書店)をご紹介します。
ペアレント・トレーニングにもいろいろなものがありますが、
こういった活動を通して親子の関係、ひいては家族の関係の再生を試みたり、
また、ピア・カウンセリングの考え方を導入して仲間同士の関係を豊かにしたりと、
西濃学園では人間関係をつくること・育むことを学習や生活の基盤としてさらに力を入れていこうと考えています。

現代ほど、親が子どものしつけに悩む時代もなかったと思います。
子どもの問題がどんどん難しくなり、親は自分の行うしつけに自信が持てなくなっています。
また、児童虐待のニュースが連日のように報道される中、「自分のしているしつけは虐待では?」と不安になることもあります。
ここで紹介するのはアメリカ生まれのペアレント・トレーニングを日本流にアレンジしたものです。
このテーマに関心を持たれた人に共通するのは、きっと「もっとうまく子どもをしつけたい」という気持ちでしょう。
そしてうまく子どもをしつけたいという気持ちは親の愛です。
「しつけとは何ですか」と聞かれたとき、いろいろな答えが浮かぶでしょう。
筆者は、「しつけとは親の愛情を伝える方法です」と答えるそうです。

ではどのようにすればいいのでしょうか。
子どもの成長に悪い影響を与えたいと思い、しつけをする親はいません。
しかし、結果的に子どもに悪い影響が出てしまう場合があります。
子どもに悪い影響が出てしまうしつけとは、多くの場合、叩いたり怒鳴ったりといった罰を伴うしつけです。
これらのしつけは、子どもに、してはいけないことを伝えるというより、子どもに親は怖いといった恐怖心を伝えてしまうようです。
そして、このことにより、子どもの成長に一番大事な親子関係にダメージを与えてしまうのです。

親子関係が悪くなると、それだけ親の愛情が子どもに伝わりにくくなります。
つまりは親と子どものコミュニケーションが難しくなるのです。
親と子のコミュニケーションが悪くなると、親の指示がうまく子どもに伝わりにくくなるので、
子どもは親が何を求めているのかがわからなくなり、その結果、子どもの問題行動は増加してしまいます。
そして、その状況は親の苛立ちを強め、罰を伴うしつけを生み出しやすい状況をつくります。
その結果として使われた罰は親子関係にダメージを与えます。
さらにその親子関係のダメージは親と子のコミュニケーション不良の状態を生み出すという連鎖を引き起こします。
それが、罰を伴うしつけが生み出す親子関係のバッドサイクルです。
このサイクルになると、親も子も引けなくなるのが悲しいところです。
このサイクルがはじまると、抜け出すのはなかなか難しいのです。
そしてこの状況では、親は子をかわいいと思えなくなり、子は親を怖い存在だと感じてしまいます。
そしてこの親子関係が子どもに与えるのは、自分はダメな子だというコンプレックスです。
では、これからバッドサイクルの逆のグッドサイクルの実現を目指す幾つかの方法をみていきましょう。

<わかりやすく伝えよう 具体的な言い方のすすめ>
親の思いがうまくキャッチされれば、子どもとの関係はうまくいくはずです。
親の思いがうまく子どもに伝わり、親も子どものサインをうまくキャッチできている状況とは、
親子関係にグッドサイクルが生まれている状況です。
でも、一度バッドサイクルが生まれてしまうと、お互いのサインをキャッチすることができなくなるのです。
このように親の思いがうまく伝わっていないなと感じるとき、
まずやってもらいたいのが、わかりやすく伝えるためのちょっとした工夫です。
子どもたちに何かを伝えようとするとき、どのような言い方をしているのかを少し考えてみましょう。

今からレストランに行くとします。
前回の外食では、子どもは走り回り、さんざんでした。
もう行きたくないと思ったものです。
でも、外で食事をするというのは、親にとっても楽しみなことです。
行く前に、子どもに言って聞かせたいと思います。どのように言うでしょうか。

「今からレストランに行くから、ちゃんとしているのよ」
「今日はいい子にしていてね」

この表現が浮かんだ方、要注意です。
「ちゃんと」や「いい子」という言い方は便利で、よく口から出ます。
でも、この言い方で、親のしてもらいたいことが子どもに通じるでしょうか。
これらの言い方が便利なのは、親は「ちゃんと」や「いい子」という親のイメージを子どもに言っているつもりになれるからです。
でも、子どもにとってはどうでしょうか。
これらの言い方で、親のしてもらいたいことを理解するのは難しいと言えます。

ではどうしたらいいかを、次号で、また親の会を通して一緒に学んでいきたいと思います。


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