学園日誌

diary

学園長のひとりごと

父親の背中 ( 1 )

そろそろ人生のまとめに入ろうとしているこの頃、父のことをフット思い出します。幼い頃父は自転車の後ろに私を乗せ商店街に買い物に連れて行ってくれました。その時不思議なことに、魚屋さんが二軒あるのに、父は片方の店でしか買いませんでした。私から見ればもう一つの店は大きくきれいな感じがしていました。ある時父に聞きますと、「あの店の主人は父さんが戦地に行っている時隣りの班の班長で、きらいなんだ」、なぜと問いただすと「当番兵であったある日、自分の班の班長より、隣りの班長から、墨と硯を借りてこいと命令された」隣りの班長の所へいき「〇〇班長殿より、墨と硯をお借りしてくるようにと命令されました。お貸し下さい」とお願いしたところ、班長は「聞こえん、もっと大きな声で言え」と言われ、どなるような声で何回か話しても「聞こえん」の繰り返しで、「聞こえんものには話にならない」と言いながら一発殴られたそうです。自分の班長に報告すると「役に立たない奴」といってまたどなられたとのことです。父は命をかけて戦地にきている兵隊にこのような仕打ちをする内務班では、日本は負けると感じたようです。そして、絶対に家へ帰る、そのため班長から薦められている下士官への試験は受けず、一兵として我慢し日本へ帰ると決意したとのことです。敗戦になれば復員は兵隊からだと考えたようです。そのような話をしてくれ、父は「こだわるようだが、あの店には行かない」と言いました。幼いながら何か父の一面を見せられたのですが、どうもその傾向は自分にもあるなぁ・・・と苦笑いしています。・・・


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