学園日誌

diary

学園長のひとりごと

人を思う深い心

本日の中日新聞の「中日春秋」に大正7年当時大阪府知事であった林市蔵氏のことが書いてありました。この年の晩秋の夕暮れ、氏は理髪店で整髪中、ふと鏡に映っている光景に目をとめられた。ぼろぼろの浴衣の女性が乳児を背負い、二人の幼子の手を引き新聞をうり歩いている。知事は近くの交番に寄り、この母子について調べるように命じた。数日後に届いた報告書には、稼ぎ頭が病で働けなくなって一家は困窮し、寝具すらないことが書かれていた。調べた警察官もその暮らしぶりに胸を痛めたのか、報告書には涙がにじんだような跡があったそうだ。・・・と書かれていました。林市蔵氏は熊本県の下級武士の長男に生まれ、5歳の時父親が亡くなられた。その後お母さんの巻きたばこの内職でかろうじて生活ができ、あちこちの書生になって学資を稼ぎ、苦労して東京帝国大学を卒業されたといいます。
 私は、林市蔵氏の温かい心と、調査した警察官が涙ぐんで報告書を作成されたことに深い感動を覚えました。学園の子ども達も他人の苦しみが心底共感できる人になって欲しいと願っております。


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